平成15年度 講演会 | ||
カビを用いた室内環境の調査「カビ指数による環境評価」 環境生物学研究所 所長 農学博士 阿部惠子 氏 |
1.はじめに 2.カビ指数 3.定常環境におけるカビ指数 4.カビ指数とカビ汚染 5.カビ指数と浮遊真菌濃度 6.カビ指数とダニアレルゲン 7.まとめ 講演会のページに戻る | ||
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4. カビ指数とカビ汚染 |
4-1.集合住宅の年間調査 |
ここから先は、実際の住宅でのカビ指数調査についてのご報告です。 神奈川県伊勢原市の一軒の集合住宅で、カビ指数と目に見えるカビ汚染の関係について調べました。調査住宅は3階建ての1階、南北に開口部があり、居住者は2名、空調機はありませんでした。 調査時期は1992年の4月から1年間で、カビ指数調査個所は住宅内20箇所と戸外1箇所です。カビセンサーの曝露期間は1週間で、毎週、新しいカビセンサーと取り替えました。 温度と相対湿度は住宅内5箇所と戸外1箇所で、1時間毎に自動計測しました。 カビ汚染状態は、築1年半(入居後半年)と築4年(入居後3年)に目視で調査しました。 |
4-2.春 | 4-3.夏 | |
住宅内のカビ指数調査結果を示します。 矢印が調査箇所で、○の中の数字は上部(天井下30cm)、□の中の数字は下部(床上30cm)のカビ指数です。−は調査期間1週間で発芽なし(カビ指数7未満)を表します。 図は、春のカビ指数分布で、調査は3月31日〜4月7日です。 北東室の北隅下部、玄関、トイレ、および浴室の4箇所でカビ指数が検出されました。 |
図は、夏のカビ指数分布で、調査は、7月7日〜7月14日です。 夏期の住宅内は、全ての調査箇所でカビ指数が検出され、家中がカビの育つ環境になっていました。浴室とトイレではカビ指数50を超え、カビの胞子が1日で発芽する環境でした。 |
4-4.秋 | 4-5.冬 | |
図は、秋のカビ指数分布で、調査は10月13日〜10月20日です。 秋になると住宅全体のカビ指数は低下しましたが、浴室、洗面所、トイレ、玄関、北東室の北隅下部では高いカビ指数(カビ指数10以上)が検出されました。 |
図は、冬のカビ指数分布で、1月12日〜1月19日の調査結果です。 冬は、ほとんどの箇所でカビ指数が検出されませんでしたが、浴室と北東室の北隅下部は冬でもカビ指数が検出されました。 |
4-6.年間のカビ指数平均値 |
調査個所と年間のカビ指数平均値です。 向かって左の図はカビ指数調査個所で、右の図が年間のカビ指数平均値です。AからUがカビ指数調査個所を表します。 カビ指数が最も高かった個所はL:浴室です。次いで、J:トイレ、I:玄関、K:洗面所、B:北東の部屋の北東隅の下部が高い値でした。この5箇所が、U:外気よりもカビ指数が高かった個所です。 住宅内のカビ指数は、上下を比べると、上部より下部のほうが高い値になりました。例えばAとBを比べると3.7と5.8で、QとRを比べると2.1と2.8です。 南北を比べると、北側のほうがカビ指数が高くなりました。例えばAとQを比べると3.7と2.1です。 |
4-7.カビ指数とカビ汚染 |
目視調査でカビ汚染が認められた個所と、年間のカビ指数平均値を示します。 緑の丸印がつけてある個所が築4年の目視調査でカビ汚染が認められた個所です。 カビ汚染が認められた個所は、いずれも年間のカビ指数平均値が5以上で、カビ指数が外気より高い値を示した個所でした。 浴室は築1年半(入居後半年)で、すでに目地の部分でカビ汚染が認められました。 築4年(入居後3年)の目視調査では、浴室の目地の他に、玄間、トイレおよび洗面所の木枠と、北東室の東側の壁でカビ汚染が認められました。 汚染部分からカビを採取して種類を調べると、クラドスポリウムとペニシリウムでした。 |
4-8.気候パラメーターと室内の温湿度 |
調査住宅の温度と相対湿度を示す気候図です。縦軸が温度(℃)、横軸が相対湿度(%)、破線が絶対湿度(空気1kgあたり何グラムの水分が含まれるか)、実線がカビ指数です。 それぞれの記号は、○が南側和室の南西隅の上部、□が同室の同隅の下部、●が北東室の北東隅の上部、▲が同室の廊下側の上部、×がトイレ、★が外気(バルコニー軒下)の、7月、10月、および1月の月平均温湿度です。同じ月は点線で囲みました。 住宅内の絶対湿度は、同じ季節ではほぼ一定で、季節によって大きく異なりました。 調査住宅の7月の室内気候は、ほとんどの個所がカビの育つ気候に位置していました。外気のカビ指数も高く、換気しても入ってくるのはカビ指数の高い空気で室内のカビ防止効果は期待できません。 1月の室内気候は、カビが発育する領域から離れていました。10月は7月と1月のちょうど中間でした。 |
4-9.カビ防止策 |
ここで述べた集合住宅での調査から、夏は外気の絶対湿度が高いので、換気ではカビは防げない、除湿が必要ということがわかります。 冬は、住宅の中も絶対湿度が低いので、外気の影響による温度低下を防ぐことができれば、カビは防止可能で、断熱が有効になります。 |
4-10.夏期除湿の効果 |
夏期の対策として除湿機を入れた例を示します。 梅雨の時期に、戸建て住宅の空き部屋と物入れに除湿機を導入し、稼動させた場合とさせなかった場合を比較しました。使用した除湿機は一般家庭用の除湿機で、連続運転にすると、室内の相対湿度を50〜60%に保ちます。 6月3日から2週間、除湿機を使用しないと、何れの調査箇所もカビ指数が検出され、カビが育つ環境でした。 6月17日から2週間、除湿機を連続で稼動させると、除湿機を入れている空室と物入れではカビ指数が検出されず、除湿機の無い廊下と戸外(駐車場の軒下)ではカビ指数が検出されました。 7月1日から1週間、除湿機を停止すると、全ての調査個所でカビ指数が検出され、次の週に除湿機を稼動させると除湿機を入れていた個所だけカビ指数が検出されませんでした。 除湿はカビ防止に有効です。 |
4-11.冬期住居内温度の影響 |
前述の集合住宅の冬の絶対湿度を使い、壁面の温度が何度まで低下するとカビの発育する環境に変わるか計算しました。 絶対湿度6.5g/kg D.A.(乾燥空気1kgあたり6.5gの水分を含む)は1月の室内の絶対湿度です。この絶対湿度の空気は、室温20℃では相対湿度45%で、カビ指数は1未満です。温度が12℃まで低下してもカビ指数は1未満です。 冬の外気の影響を受けて温度が11℃に低下すると、カビ指数5で壁面はカビの発育する環境に変わります。温度がさらに低下するとカビ指数はさらに高くなります。 8℃以下に低下すると、カビ指数は70を超えカビの胞子が1日で発芽する環境になってしまいます。 断熱をしっかりして、12℃以上を保っていれば、カビが生えてくる心配はありません。 |
4-12.まとめ |
1.はじめに 2.カビ指数 3.定常環境におけるカビ指数 4.カビ指数とカビ汚染 5.カビ指数と浮遊真菌濃度 6.カビ指数とダニアレルゲン 7.まとめ 講演会のページに戻る | ||
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