平成15年度 講演会 | ||
カビを用いた室内環境の調査「カビ指数による環境評価」 環境生物学研究所 所長 農学博士 阿部惠子 氏 |
1.はじめに 2.カビ指数 3.定常環境におけるカビ指数 4.カビ指数とカビ汚染 5.カビ指数と浮遊真菌濃度 6.カビ指数とダニアレルゲン 7.まとめ 講演会のページに戻る | ||
このページの内容・図版等の無断使用はおやめください。お問い合わせは、環境生物学研究所へお願いします→http://www.kamakuranet.ne.jp/~kabi/Japanese/index.html) |
2. カビ指数 |
2-1.壁面に設置したカビセンサー |
カビ指数調査のための試験片として、カビセンサーを作りました。写真がカビセンサーです。内部にはカビの胞子と栄養分がはいっています。外側は不織布で周囲をヒートシールしてあります。 壁面に設置する場合は、このようにクリップではさんでくぎに掛けるか、あるいは画鋲で壁に止めます。 もし、このカビセンサーを置いた場所が、カビが育つ環境であれば、中でカビが育ちます。カビが発育できない環境であればどんなに長期間カビセンサーを設置していても、中のカビは育ちません。 内部のカビがどれだけ育つかは周囲の環境に依存しますので、その育ちかたから周囲の環境がわかります。 |
2-2.カビセンサー内部の試験片 |
図は、カビセンサーの中に入れている試験片の正面図と、真横に切った断面図です。 内部には、3種類のカビ(ユーロチウム、アスペルギルス、アルタナリア)の胞子を入れています。 透明なプラスチック板の上に栄養分に分散させたそれぞれの胞子をスポット状に接種し、乾燥後、上から通気性のある透明なフィルムで覆い、周囲を両面テープの枠で囲み密着させたものです。 水分や酸素はフィルムを通して内部のカビに供給されます。 注)ユーロチウム:好乾性カビEurotium herbariorum J183株 |
2-3.カビ発育の例 |
写真は、カビセンサー内部でのカビ(センサー菌)発育例です。 Aの写真は、胞子が発芽して約70μmの菌糸が伸びています。 Bの写真は、菌糸がAの写真よりも長く伸びた状態で、胞子を分散させたスポットの外側に菌糸が伸びています。スポットのエッジから外側に伸びる菌糸長は、約300μmです。 同じ期間で、例えば1週間で、Aの発育を示した個所とBの発育を示した個所があれば、Bの発育を示した個所のほうが、カビが育ちやすい環境であったことがわかります。 |
2-4.カビ指数測定法 |
カビ指数の測定法は、以下のとおりです。 (1)調査したい個所にカビセンサーを設置し、調査環境に一定期間曝露します。 (2)一定期間後にカビセンサーを回収します。 (3)回収したカビセンサー内部のカビ(センサー菌)を顕微鏡写真に撮ります。 (4)写真プリント上で菌糸長を計ります。 (5)菌糸長とカビセンサーの設置期間をもとにカビ指数を計算します。(計算法は次の図で説明) 通常の室内環境の調査では、3種類のセンサー菌(それぞれ性質が違う)の中で最も菌糸が長く伸びたカビを選び、そのカビを使ってカビ指数の値を出します。調査した環境で一番発育しやすいタイプのカビをどれくらい発育させる環境かを見ます。 |
2-5.カビ指数の計算 |
カビ指数の計算法です。 カビの発育(環境に対するカビの応答)を曝露週数で割った値、すなわち、1週間あたりのカビの応答がカビ指数です。 カビの応答は、次の図で説明します。 |
2-6.標準曲線 |
図は、菌糸長をカビの応答(ru)に変換するための標準曲線です。カビの応答には、response unit (ru) という単位をつけました。 標準曲線の作り方は、まずはじめに、基準菌(ユーロチウム)を基準気候(温度25℃・相対湿度93.6%)で培養し、生育曲線をつくります。生育曲線は培養時間(h)と菌糸長(μm)の関係を表す曲線です。 次に、その生育曲線の培養時間(h)をカビの応答(ru)に置き換えます。これにより、菌糸長(μm)とカビの応答(ru)の関係をあらわす標準曲線のできあがです。 基準気候下ではセンサー菌の応答(ru)は培養時間(h)に1:1で正比例することになります。 Aの菌糸長は胞子から菌糸先端までの距離、Bの菌糸長は胞子分散スポットのエッジから菌糸先端までの距離です。 |
2-7.センサー菌の応答 |
写真は、センサー菌の応答の一例で、胞子を分散させたスポットのエッジから菌糸先端までの距離は約300μmです。 標準曲線Bから、この菌糸長は、20ruの応答に変換できます。 カビ指数は応答(ru)を曝露期間(週)で割った値です。 20ruの応答が1週間の曝露期間で得られた環境はカビ指数20(20÷1=20)です。 20ruの応答が4週間の曝露期間で得られた環境はカビ指数5(20÷4=5)。8週間の曝露期間で得られた環境はカビ指数2.5 (20÷8=2.5)になります。 同じ応答でも、短期間でその応答状態になる環境のほうが、カビが育ちやすい環境です。 |
2-8.カビ指数 |
カビ指数とカビの発育程度を図に示します。その環境で最も育ちやすいカビが、どれくらい発育する可能性があるかで表しました。 カビ指数100の環境では、1個の胞子が1週間で直径 数mmのコロニーに発育し新しい胞子も着生します。この発育程度になるまでの期間は、カビ指数50の環境であれば2週間、カビ指数25の環境であれば4週間かかります。 カビ指数10の環境は、1週間では肉眼では見えない程度の発育で、2週間でかろうじて目に見える大きさに発育します。10週間でカビ指数100の環境での1週間と同程度の発育です。 カビ指数2.5の環境では8週間で、かろうじて目に見える大きさまで発育しますが、かろうじて目に見える程度の発育では新しい胞子はまだ着生していません。 カビ指数1の環境では8週間たってもまだ目に見える大きさにはなりなせん。 |
2-9.まとめ |
1.はじめに 2.カビ指数 3.定常環境におけるカビ指数 4.カビ指数とカビ汚染 5.カビ指数と浮遊真菌濃度 6.カビ指数とダニアレルゲン 7.まとめ 講演会のページに戻る | ||
このページの内容・図版等の無断使用はおやめください。お問い合わせは、環境生物学研究所へお願いします→http://www.kamakuranet.ne.jp/~kabi/Japanese/index.html) |
◆ Home ◆ 家洗工とは ◆ 会員 ◆ リンク ◆ サイト案内 ◆ |
日本家庭用洗浄剤工業会(家洗工) Copyright(c) Kasenko 2009 All Rights Reserved. |